北根室RANCH WAY 女1人ロングトレイル記⑨【最終回】旅の終わり
トレイル4日目でこの旅最大のトレイルエンジェルと出会うことになる。
“What's トレイルエンジェル?”トレイルエンジェルを説明するよ!
ログトレイルを歩く旅行者(=ハイカー)をボランティアで援助をする人々のこと。
水がない土地を歩くハイカーのために,荒野の真ん中のにあるタンクに水を補充したり,物資補給のため町へおりるハイカーを車で送迎してあげたり,自宅のシャワーを利用してもらったりと,やる事は様々。
キャンプ地で無料でビールやソーセージをふるまってくれるエンジェルもいるようだ。
もちろんこの時、そんな出会いがこの後待ってるとはつゆ知らず、感傷に浸りながらキタキツネと歩いている若色さん。
酔い酔い~,こんなところ歩いてる自分に酔い~
いいぢゃない,酔わせてよ。道もいいし,天気も良いしね。
山を下りる。
風景は完全に人が住む土地。
道路と家。
右手に大きな公園があって,その一画で摩周湖の地下で濾過されたという湧水を汲む。
とても美味しい水だからこの水を汲みなさいと,今朝ヒラさんに教えてもらっていたのだ。
湧水のところには,この水汲んで10年!いった感じの年季のある主婦が,マイホースを使い10個近くあるタンクに水を汲んでいた。
そのおばさまにお願いし,わたしの3本ある水筒に水をいれてもらった。
聞くと,その水汲み主婦は蛇口から出てくる水は薬品が入っているためあまり飲みたくないそうだ。
旅をするとこんな世間話ができるようになるのが嬉しい。
(普段のわたしは結構できない人なので。でも歳を重ねてできるようになってきた。歳をとるのは楽しいね)
1口飲む。とても美味しい。
明日の昼には宇都宮に着くし,1本はお土産で持ち帰ろうっと。
山を降りてから,ランチウェイの看板がめっきり減った。
道路だから,むやみに看板をつけられないよね。
でも,そこまで難しい道ではないので地図を見ながら進む。
歩く。
歩く。
考えているのは,トレイルが終わってから何を食べるか。
もうお腹いっぱい食べてやろう。これでもか!と食べたいものを食べてやろう。こればーっかり考えている。
道路は,大きなトラックが走っているが,これまでのトレイル中には見かけなかった,生活感のある乗用車がたくさん走っている。一般の人々の生活圏内に入ったのだ。
もうドライバーさん達にジロジロ見られるのは慣れたもの。
でもモロに目が会うので,視線は道路の外に向けていた。
あるのは,大きな牧場。
でも,これまでわたしが見ていた牧場とは全然違う牧場。
牛はしゃがみ込む事も困難な狭いゲージの中に1頭ずつ入れられている,
わたしの地元でも見たことのある,あの牧場だ。
正直そこから漂う匂いは,独特で,この4日間の中で初めて嗅ぐ匂いだと気づいた。
こんなに牛の間を潜り抜けてきたのに。
わたしはせいぜい4日間で70キロほどしか歩いてないのに,
こんな近い距離で,こんなにも牛の扱いが違うものかと思う。
それにしてもゴールとなる美留和駅に入る道が見つからない。
山を出ると,感覚も変わるものなのね~と思いながら,ズンズン歩く。
歩けど,歩けど
道,ない。
あまりやりたくなかったけど,スマホを起動。
マップで道を確認。
駅。通り過ぎてた。
しかも,5キロくらい通り過ぎてた。
黙ってUターン。
でもゴールがすぐそこだと思うと心は軽い。
まー歩けば着くし。と楽観的だ。
すると,目の前にシャッ!と,かっこいい車がとまり,運転席から奥様が出てくる。
「あなた,さっき逆方向に歩いていたでしょ?どこに行きたいの?乗っていきなさい」
彼女はわたしが盛大に道を間違いながらもホヤホヤ歩いていたところを見ていたらしい。
これはこれは,お気にとめていただきありがとうございます。
私,北根室ランチウェイなるものを歩いておりまして,美留和駅を目指していたのに通り過ぎてしまったのですよ。
駅はどのへんですか・・?あぁ結構歩く?。。。DAYONE~
「ここから歩くと結構な距離になるから,いいわよ,乗っていきなさい」
この女性こそ,この旅1番のトレイルエンジェル トシ子さんとの出会いだ。
どうしようかな~でも親切心を無下に断るのもなぁと思って,1度は車に乗りかけたけど,やっぱり最後まで自分の足で歩きたい。
大変ありがたいお話しなのですが,中標津空港からここまで歩いてきましたので,この足でゴールしたいのです。本当に本当にありがとうございます。
「わかった!じゃあ,美留和駅についたら連絡して!電車は1日に5本くらいしかないから,きっと時間もてあますと思うの。観光に連れてってあげる」
と言われ,携番を交換する。
「じゃあまたあとでね~」
とトシ子さんは華麗に去っていった。
トシ子さんに大体の場所を聞いたので,行き過ぎた道を戻って歩いていると,
ヒラさん車でブーンと登場(笑)
ヒラさんは,美留和駅にとめてあったハイエースに乗っている。
(ヒラさんは車中泊をしながら北海道を巡っている旅人)
ヒラさん,わたしより歩くペースゆくりなのに,先にゴールしやがった!
ヒラ「どうしたの?」
若 「行き過ぎました~」
ヒラ「駅の時刻表見たけど全然電車ないよ。」
若 「そうみたいですね~」
ヒラさん少し考えて,「(車に)乗りなさい」と言ってくれる。
でもやっぱりゴールまで自分の足で到着したいことと,今面白い人(トシ子さん)と出会ったので,その方と約束をしたんですと伝える。
わかった,それじゃ気を付けて。 ヒラさんも!
ヒラさんの車が見えなくなるまでお辞儀をしていた。
おそらく,今後ヒラさんと出会うことはないだろう。山での一期一会は儚くも、爽やかだ。(息子さんの嫁候補になったけどw)
ようやく美留和駅への道を見つける。
駅に続く道だとは思えないほど細い道。。。
ちなみにここで,北根室ランチウェイの全行程【71キロ】について一部細く説明をさせていただきたい。
北根室ランチウェイは,中標津交通センタ~美留和駅を正規ルートとしているので,中標津空港から出発したわたしは,正確には71キロを歩いていない。
おそらく63キロくらい。
でも,ここで道を行き過ぎたことにより,8キロは多く歩いたので
若菜は北根室ランチウェイ71キロ歩いた!と言うことにしようと決めた。
そしてついに、ゴールとなる美留和駅到着。
2018年9月28日(金)15:20
北根室LANCHI WAY制覇!!
やったーーーーーーー!!!!
そこには,「The End Of Kiraway」の標識が。
あ~,着いたんだ~と感慨深くなる。
少しその場で到着の余韻を味わったあと,トシ子さんに電話をかける。
「あ,さきほどお会いした若色です。今美留和駅に無事着きましたのでご連絡しました。」
オッケー今から出るから待っててね~
ちょっとの警戒心もなかったのかと聞かれればもちろん嘘になるが,
まぁどうにかなるでしょうとその場で待つ。
トシ子さん登場。
トシ子さんが写真を撮ってあげるというので,The End of kiraway標識と写真を撮ってもらう。地味にありがたい。
トシ子さんの携帯でも撮影。
トシ子さんはブログを書いているそうだから,このことをアップしたいとのこと。
どうぞどうぞどうぞお使いください。
ブログはこちらからどうぞ!
北海道での田舎暮らし生活も興味深いですよ〜
トシ子さんに何時に帰ればいいの?と聞かれ,釧路駅~札幌駅の夜行バスを利用する予定のわたしは、終電に乗れればOKですと答える。
じゃあ摩周湖の展望台に行こう!と言われ,車に乗りこむ。
摩周湖展望台に着き、摩周湖の話を聞きながら、トシ子さんちを見てみたい!というわたしのリクエストに答えていただき、トシコさん家を目指すことに。
トシコさんのお宅は道路から少し入った広大な土地に立つ、高床式の住居だった。
広い家を囲うように柵がはってあり、入る時気をつけてねと言われる。
気をつける理由がすぐわかった。
◯◯がいる。。。。苦笑
わたしを拾ってくれるだけのことがあって,トシ子さん夫婦は,かなり変わっていたw
さて問題!トシ子さん夫婦(50代)の変わっている点とは?!
1.関東から,知人も親戚もいない北海道に引っ越す
2.自宅を自分で建てる(建築仕事の経験はなし)
3.庭でポニーを放し飼いにして飼っている
4.初めて会った見知らぬ女子に夕飯を御馳走する
答え発表。全部です!笑
もともと東京近郊に住んでいたのだが,北海道への移住を決意。
北海道にて、都会では考えられないくらい広い土地を購入し,そこに自分で家を建てたw
電気が通っていない土地だから,役所に言って電気を通してもらう。
除雪車も通らないから,役所に交渉。
ポニーを買ってみたかったから、知り合いの牧場から譲ってもらう。
庭でポニーが走っていますw
3匹の犬と,ポニー,旦那様との6人大所帯の暮らし。
冬は雪がすごいと思うんですが,今の生活は満足ですか?
というわたしの質問に2人揃って「大満足」と答える。
50代で,妥協をせず「今の生活に大満足」と言い切れる大人はわたしに周りにどれくらいいるだろう?
その生き方には大変興味を持ち,インタビュアーばりに色々なことを質問し続けた。
土地を買ってから,これで良かったのかと後悔して落ち込んだことだりもした。でも,ゴミゴミとした東京近郊に住み続ける事を考えたら,今の暮らしは大満足しているとのこと。
これは旦那様も同じことを言っていた。
(旦那様は,すごく雰囲気のあるイケメンおじ様だった)
あたり前,本当にあたり前なんだけど
色々な生き方があるんだなぁと思う。
ポニーのメイちゃんにあげるためにもらってきた,大量の葉っぱはスイートコーンの葉っぱ。
その葉っぱの合間に隠れていた、収穫しきれない小さなスイートコーンを見つけ,蒸してもらい,それを食べながら話を聞いた。(=馬ちゃんのご飯をおすそ分けしてもらう)
トシ子さんの家にいた,犬のうち1匹がジャーマンシェパードだった。
若色はジャーマンシェパードが大好きで,疲れた時は,ジャーマンシェパード動画を観て癒されてるほどの好きっぷりだったので、これには食いついた。
ジャーマンシェパードのシータと一緒に写真を撮ってください!!!とお願いし,
ものすごい数の蚊と,シータの、お前の顔なめたい攻撃をうけながら撮影。
その後,ご夫婦がご贔屓にしている喫茶店へ。
あ,ここ道を間違えた時に通りがかって、気になっていたお店だ。
そこで夕飯を御馳走してもらうことになる。
えええ!むしろ,わたしが支払わなきゃならないのに!!
と言うも,トシ子さんはいいのよ~と言ってくれる。
ト,,,トレイルエンジェルや。
そこで食べたハンバーグが美味しかったこと。
ハンバーグも美味しかったし,わたしには目玉焼きが嬉しかった。
トレイル中は,卵料理と本当にご縁がない。
料理ではなく好きな食べ物の素材はなに?と聞かれたら,
「卵」と答えるかもしれないくらい,卵はごちそう。
(1日1個が目安なところも,御馳走感を増大させるよね)
キレイに完食し,食後に美味しいコーヒーもいただく。
あぁ,嬉しいなぁ。
トシ子さんに夕飯の後はお風呂に入りたいという希望を伝えていた。
トシ子さんは予め旦那様と,駅から近く,日帰りお風呂が入れて,,,と考えてくださった結果,美留和駅から1つ離れた川湯温泉駅から近いホテルを思いついてくれた。
そこまで車で送ってもらえることになった。
そういえば信号に引っかかってない。
てか,信号がない。
歩きだけでは決して味わうことができなかった北海道を,トシ子さんに拾われたことにより体感することができた。
トシ子さんはこれまでにもハイカーを拾っていた。
以前は美留和駅の前で,荷物を拡げて整理していた,わたしより少し年上の女性ハイカーだったよう。
面白いことがあるとjoinしてしまう性格らしい。(共感します)
ホテルに着くと,トシ子さんが日帰り温泉は利用可能かフロントに聞きに行ってくれた。
ねぇ,やさしすぎる。
お互いFBをやっていることがわかったので,メッセンジャーを交換。
本当にお世話になりました!と頭を下げ,車を見送る。
お風呂は本当にいいお風呂で貸切だった。
時間もたっぷりあったので,久しぶりのドライヤーで髪を乾かし、携帯の充電もすることができた。
その後ホテルを後にし、最終の20:46の電車で釧路に向かう。
日の出に起きて,日の入に寝ていたわたしには,まぶたが重い。
無人駅で,切符を買うところもなく,
ホームになんらかの表示はあるのだろうが,暗くてよく見えない。
多分こっち?とう勘で,ホームに立っていたところ
青年があとから来たので,釧路行きはこちらであっていますか?と尋ねる。
親切に教えてくれる。ありがとお。
釧路駅へは2時間くらいかかる。
その車内で書きたい欲求が爆発し,書き始めたのがこのトレイル記です。
9月28日 釧路駅までの電車の車内で書き始め、12月26日に書き終えることができました。
全9話。番外編1話。動画1話。
わたしの長い旅にお付き合いくださりありがとうございました。
追伸
若色が地元に戻り最初に選んだ食事は、あつあつのラーメンでした!