今日も世界で迷子。

小心者の冒険者。長年勤めたお仕事を辞め、海外をぐるりとしていました。公務員を辞めて思うことや、旅の記録を綴っています。

「愛情生活」で潤ったもの

最近のわたしは偏食気味に情報を取り込んでいた。

自分に知識を入れるタイプのもの(Daigoさんの動画よく見ます)か、頭空っぽで見ていられるもの(世界の果てまでイってQばかり見てた時期があった)の、どちらかで、なんだか時間ばかり食うけど、どこか満たされなく空虚だった。

自分の意識としては知識系を見たいのに(見なきゃダメだと思っているのに)、頭空っぽで見られる動画を見てしまい落ち込んだりもしていた。

どちらも必要なんだけど、そのどちらかを見る習慣になってしまっていて、ループから抜け出せないでいた。

そこで何気なく手にとったエッセイ本が、荒木陽子さんの著書「愛情生活」だ。
これはずっと母の本棚にあったらしいが、タイトルからしてわたしの琴線に触れず、視覚に入ることもなければ、手にとることもなかった。

しかし先日SNS上で流行った「7カバーブックチャレンジ」にて、わたしにバトンを回してくれた女性がこの本を1冊目に紹介しており、母から「わたしも持ってるんだ~。本棚にあるんだよ。」「そうなんだ~」とおしゃべりをする機会があった。

時間もあることだし、わたしの尊敬する女性と、わたしを育ててくれた女性が好きという本を読んでみようと思って手にとった。

わたしは、熱量が最善の手段でわたしに伝わってきたときに「コポコポ」という音を感じることがある。
立っている自分を取り囲んだ透明のガラスの箱が水で満たされていくような感覚だ。(間違っても、映画「ザ・セル」のように水槽に女の子を閉じ込めて水をためていくような苦しい感覚ではない)


この本を読んだ時にそれを感じた。
ふんわりとした陽子さんの感性から生み出される言葉は、わたしをコポコポと満たしていった。

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愛情生活 荒木陽子著


彼女の言葉はスタイリッシュで、偉ぶることなく、言葉の選び方が豊かで、瑞々しい。
もし、彼女ので言葉がなんらかの形をもってわたしの手のひらに置かれたら、きっとやっこくて、ポタポタと水滴が垂れていて、わたしはその柔らかいものを握り潰すとどうなるんだろうという好奇心に勝てそうになく、クチャっとチカラを加えてしまいそうだ。
そして何より彼女の文書は粋だった。

わたしはたまたまパソコンの近くで本を読みだしていたので、素敵な表現をいくつか抜粋することができた。少し紹介いたします。

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「彼は私の中に眠っていた、私が大好きな私、を掘り起こしてくれた。彼に遭ってなかったら、そんな事には気づかずに過ぎたかも知れない。ごくフツーの完成の男の人と結婚し、寝ぼけ眼のまま一生を送ったかもしれない。」

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だから彼の傍で飲んでいる時は、いついかなる時に、帰るぞ、の声がかかってもアイヨと格好よく立ち上がれるだけの心の準備が必要である。

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女としての魅力がわたしにあるとしたら、それは、夫のマナザシや言葉によって作られているのではないかと、つくづく思う。

「愛情生活」荒木陽子著 より抜粋

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そして何より彼女の食事の書きどころが大好きだった。
(映画における食べるシーン専門家のわたしは、Youtubeでもたくさん食べる動画を検索してしまう上、よもやエッセイでも食べるシーンが大好きなところを見ると、食べることに異様に執着がありそう。私の前世は十分に食べられなく戦地で散った日本兵なのかしら)


彼女の本をゆっくり読んで、わたしの感性が少しずつ潤っていき、「そうだ、わたしも、書こう」と思いパソコンに向きあえている。

偏った情報だけでは、わたしは書き出さなかっただろう。


追伸 荒木陽子さんを出して、潤うという言葉を使うと途端にセクシャルな色味を帯びてくるのが、彼女の魔法なんだわね